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雛形は利用しましょう
雛形を利用すること自体がとくに悪いことではありません。
いちいち契約書をゼロから自分で作り出すのは非常に面倒な作業です。
当事務所でも契約書の作成を有料で行っていますが、雛形を利用しないことはありません。
以下に、雛形を利用する上で注意しておかなければならないことを列挙していきます。
雛形の選び方
雛形ですがウェブ上で検索すると沢山出てきます。
どれを選択するかということですが、抽象的にいうと信頼の高いものを選ぶと良いでしょう。
例えば官公庁が例示しているような契約書があるのであればそれを採用されるといいです。
しかし、内容を読まずにやみくもに信頼することは避けてください。
公的な機関が例示しているような契約書でも、完璧であることありませんし、ましてや弁護士や行政書士などいくら専門家であったとしても個人が作成したものについては、玉石混交といえます。
また、雛形の完成度とそれがご自身の希望してる契約に合うかどうかはまた別の問題だからです。
できれば複数選びましょう
三人よれば文殊の知恵ではありませんが、複数の契約書を検討することによって、よりよい契約書の原案を作成することが可能になります。
複数の契約書を見比べることによって、良い点悪い点を区別し、良いところを総合するようにして作成していってください。
切り貼りはやめてください
複数の契約書を検討することは非常に重要なことですが、考えなしに切り貼りすることはやめましょう。
単純に切り貼りをしてしまうと、複数の契約書で文体が違うことがあり、読み手に違和感を与える可能性が高いです。
また、同じものを重複して規定したり、矛盾する規定を作ってしまうことがあります。
このような事はできる限り避けましょう。
このようなことが起こることを避けるためには、それぞれの契約書の雛形をきちんと読み込むことです。
契約書の雛形はそのまま写すのではなく、参考にするという意識で読むことが重要です。
すべてを網羅する契約書がいい契約書だという意識は捨てましょう
契約書のチェックの仕事をしていると、様々なひな形を参考にして、ありとあらゆる条項を盛り込んでいる契約書を作成される方がいます。
そのような方のなかでも特に問題なのは、きちんと整理されていない場合です。
この場合ではあまりにも読みにくくなりますし、様々な点で重複してしまいます。
重複してしまうと矛盾点も生じてきます。
たとえ重複せず矛盾しないとしても、一般的な私人間における契約においてはやはりわかりやすさという点が重要ですが、その点が欠けるということになってしまいます。
細かく規定する必要があるかを考えましょう
様々な契約書を見ていると、事細かに書いてある条文と抽象的に書いてある条文が非常に極端に分かれる場合があります。
意図して行っているのであればいいのですが、そうでない場合は少し問題です。
細かく書くメリットとしては、もちろんそのような細かな場面が起こったときの効果が判りやすいということが挙げられます。
しかし、逆に細かく記載するデメリットとしては、そのような例示された場面以外については適用されないという反対解釈をされてしまう点です。
その契約に求められる程度の細かさをきちんとわかったうえで適切な具体性抽象性を持たせるようにしてください。
このような雛形は問題だ
以下は、順不同で様々な契約書の雛形を見てきた経験からあまり良くないと思われる雛形の特徴を述べていきます。
もちろん例外はあるでしょうし独断と偏見ですのであまり鵜呑みにしないようにしてください。
契約書の前文が無意味に長い
契約書の前文に理念や目的などをだらだらと書いているひな形を時々目にします。
もちろん理念や目的を書くことがいけないことなのではありません。
前文に長々と書くことが問題なのです。
もし、理念や目的が長くなるのであれば、それは第1条として記載すべきであって前文に書く必要は原則として特にありません。
定義付けがおかしい
定義付けというのかどうかは微妙なところですが、たとえば当事者の名前を最初に書いて、(以下「甲」という。)などのように記載する場合があります。
今書いた「(以下「甲」という。)」という記載方法が法令で使われているものです。
以下の後に読点を打ったり、「という。」を書かなかったりする例が見られます。
もちろん法令に従う必要はないので自由なので、これだけで雛形が問題というわけではありませんが、使用方法が混同しているとなるとこれは問題の雛形と言えることになります。
定義付けたのに使っていない
「以下「○○」という。」という定義をしたにもかかわらず、その後一切その言葉を使用しない例があります。
これでは定義をした意味がありません。定義する必要がなかったわけです。
このような事例は、切り貼りをした場合によく見られます。
定義の条文を作ったにもかかわらず定義の数が少ない
最近よく見られます。
定義する言葉の数が少なかったり、重要性の低いものについては、契約書の中の問題となった条文で定義付けていけば足ります。
それにも関わらず、よくあるのは第2条などで「定義」と銘打って2,3個程度の言葉の定義をしている例です。
定義の条文は必ずいるというものではありません。
数が少ないのであれば条文自体を削除しましょう。
文章の語尾が統一されていない
ですます調だったかと思うと、だである調があったりして文末表現が統一されていないでもよく目にします。
日本語として問題ですし、切り貼りをしたのかなという想定をされてしまいます。
あまりに責任逃れをしている
これは雛形の場合にも、自身で作成されたとしてチェックの依頼を受ける場合にもよくあるのですが、あまりに一方的に責任逃れをしている規定がある場合があります。
正直なところかなり自己中心的に思えますし、契約の相手当事者としては不快に思うでしょう。
もちろん契約当事者間で上下関係がある場合は仕方がないのかもしれませんが、そのような場合であったとしても、あまりくどくど責任を負わないということを記載せずに、端的に必要なところでのみ記載していくほうがスマートといえます。
番号の使い方が統一されていない
この辺りまでいくと、単なるミスと思えるのですが、意外と数字の使用のしかたが統一されていない雛形をよく目にします。
条・項のあたりはいいのですが、号になるととたんに様々な数字を使用し始める例が多いようです。
ちなみに法令では、1項は数字を振りません。
また号は数字に○を付けます。
しかし、実際は1の数字を付す場合が多く、数字に○をつけるのではなくカッコをつける場合が多く見られます。
これはワードなどで作成するときに、わかりやすいということと機種依存文字を避けたいという要望があると思います。
これで自体は特に問題ありません。
なお、条文の副題について法令では条文の前に書きますが、これも作成の簡単さから条文の後に書く場合も多いです。
最後に
よりよい契約証を作成するために様々なひな形を利用することは推奨されるべきですが、ただやみくもに数を集めてそれを切り貼りしたのではどんどん粗悪なものが作成されてしまいます。
それであれば、自分の言葉で考えて書いたほうがマシです。
きちんとひな形を読み込んで考えた上でよりよい契約書を作成してください。
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