婚約破棄の慰謝料請求に関する様々な基本知識をできるだけ簡潔にまとめました。
(必要に応じて随時更新する予定です。)
この投稿の目次です
- 1 婚約破棄慰謝料問題の基礎知識
- 1.1 婚約には結納が必要?
- 1.2 再婚禁止期間内の婚約は可能?
- 1.3 不倫カップルの婚約は可能?
- 1.4 婚約破棄で慰謝料が請求できるの?
- 1.5 慰謝料請求が認められる正当な理由なく違反したってどういう場合?
- 1.6 相手が浮気したから自分から婚約解消した。こちらから慰謝料請求できる?
- 1.7 婚約破棄の場合の損害賠償の範囲は?
- 1.8 慰謝料って何?
- 1.9 財産的損害とは?
- 1.10 婚礼用の家具は?
- 1.11 結婚のために会社を辞めたり転職した場合は?
- 1.12 慰謝料の相場は?
- 1.13 慰謝料ってどう決まるの?
- 1.14 結納金、嫁入り道具はどうなる?
- 1.15 婚約指輪は?
- 1.16 判例は?
- 1.17 証拠はいる?
- 1.18 証拠はどうやって集める?
- 1.19 相手に土下座させたい。可能?
- 1.20 どうやって請求する?
- 2 婚約破棄の慰謝料請求段階の基礎知識(内容証明を中心に)
- 3 婚約破棄の慰謝料解決段階の基礎知識(示談書を中心に)
- 4 婚約破棄問題に関する関連投稿
- 5 当事務所のサービス及び関連ページ
- 6 お問い合わせ
婚約破棄慰謝料問題の基礎知識
婚約には結納が必要?
不要です。
婚約は、男女間に将来結婚しようという合意がありさえすれば成立するからです。
結納や婚約指輪の交換などの儀式は、当事者間の婚姻の意思を外形的に示すものとして、婚約の成立を証明するひとつの事実に過ぎません。
再婚禁止期間内の婚約は可能?
婚約と婚姻は違うので可能です。
不倫カップルの婚約は可能?
かなり昔の判例に公序良俗に反するので無効としたものがありますが、現在では実質的にみて一夫一婦制に反しないので有効と解するべきと考えられています。
婚約破棄で慰謝料が請求できるの?
できます。
婚約は婚姻するという約束、契約なので正当な理由なく違反すれば債務不履行として損害賠償(慰謝料請求)できます。
最高裁判例昭和38年
婚姻の予約は、将来において適法な婚姻をなすべきことを目的とする契約であって、これにより当事者をして婚姻を成立させることを強制し得ないが、当事者の一方が、正当の理由なく、契約に違反して婚姻をすることを拒絶した場合には、相手方に対し婚姻予約不履行による損害賠償の責に任ずべく、その損害賠償は精神的損害の賠償すなわち慰謝料の支払を含む。
婚約破棄が認められるためには、
- 婚約が成立していること
- その婚約が正当な理由なく破棄されること
が必要となります。
慰謝料請求が認められる正当な理由なく違反したってどういう場合?
- 婚約相手が不貞行為をした(性的関係を持った)
- 婚約相手から虐待を受けた(殴る蹴る)
- 婚約相手から重大な侮辱を受けた
- 婚姻届の提出を延期された
- 結婚式を延期された
- 婚約相手が精神的障害を持った
- 婚約相手が身体障害者になった
- 婚約相手が性的不能者となった
- 婚約相手の収入が極度に低下した
- 婚約相手が重大な秘密を持っていた
などがあげられます。
単純に
- 親族が許さない
- なんとなく性格が合わない
- 家の宗派に合わない
などといういう理由では正当な理由としては認められていません。
あくまで社会的相当性を求めるという話になります。
相手が浮気したから自分から婚約解消した。こちらから慰謝料請求できる?
できます。
浮気は婚約破棄を認める正当な理由にあたります。
自分から婚約解消した場合に請求が認められないというわけではありません。
婚約解消の原因を作ったほうが慰謝料を支払う義務を負うというのが原則です。婚約破棄を言い出したほうが払うのではありません。
どちらから婚約破棄したかというよりは、婚約解消の原因がどちらにあったか(破棄誘致責任)が重要な問題になります。
婚約破棄の場合の損害賠償の範囲は?
財産的損害と精神的損害(慰謝料)です。
慰謝料って何?
精神的苦痛・損害のことをいいます。
財産的損害とは?
例えば、結婚式場や新婚旅行などの申込金、キャンセル料、披露宴招待状の発送費用、新居用のマンションの敷金、手数料、解約金など。
婚礼用の家具は?
判例では、手元に家具が残っており、それらが日常生活上不必要なものとは考えられないとして賠償を認めない事例もあれば、
購入費用から処分額を差し引いた額を損害として認める事例もあります。
結婚のために会社を辞めたり転職した場合は?
これについては逸失利益として損害が認められる場合があります。
ただし、一生分が認められるわけではもちろんなく、1年程度の利益について損害として認めた判例があります。
慰謝料の相場は?
婚約の期間、解消の原因など様々な事情を考慮して決定されます。
以前は100万から300万という判決も多く見られたようですが、最近は世相を反映してか100万程度までが多いようです。
また、どうしても若年齢層が多いので10万円〜50万円という場合も非常に多く見られます。
慰謝料ってどう決まるの?
基本はご自身の希望によって決めます。
ただし、次のような要素が加味されて決められることが多いです。
- 婚約者の年齢
- 婚約者の性別
- 婚約者の社会的地位
- 婚約者の経済力
- 婚約破棄の理由
- 妊娠の有無
- 婚約期間
- 修復の可能性
などを総合的に考慮します。
結納金、嫁入り道具はどうなる?
円満に婚約破棄をする場合は、結納金・嫁入り道具についても返却するか返却しないとか合意できるかと思います。
原則としては返却されるものと考えられるでしょうが、事実上は結納金は返却しない、嫁入り道具は処分してしまう場合が多いかと思います。
次に、婚約破棄があったような場合の結納金、嫁入り道具については、
1 結納金、嫁入り道具を支払った又は準備した方が原因で婚約破棄に至った場合は、結納金については結納金とは別に損害賠償を支払うと定められる場合もあれば、結納金が損害賠償の一部として損害賠償額を減額して考える場合もあるでしょう。嫁入り道具についてはあっても仕方ない場合が多いので、処分した上で得られる利益について結納金と同様に考えることになるかとおもいます。
2 結納金又は嫁入り道具をもらったほうが原因で婚約破棄になった場合は、結納金については、結納金を返還するとともにそれとは別に損害賠償を支払う場合ことが多いでしょう。嫁入り道具については、返還しても相手が困るでしょうから嫁入り道具の金額について結納金と同様に考えることになるかと思います。
3 両者に原因がある場合は、お互い話し合って結納金の帰趨を決めることになるかと思います。
婚約指輪は?
嫁入り道具と同様、返却してもあまり意味が無い場合が多いと思われますので、費用を損害として考慮していことになるかと思います。
判例は?
浮気などの原因の場合は50万円から100万円程度、
国籍や社会的身分(部落出身)などを理由とした場合は300万円から500万円程度という判例が見られます。
証拠はいる?
裁判で請求して相手が婚約解消の原因が自分にあることの事実を否定すればいります。
それまでは法的にはいりません。
ただ、根も葉もないことで請求しては相手は応じないでしょうし、程度によっては恐喝行為として違法です。
証拠はどうやって集める?
浮気などの素行調査は探偵に依頼される方も多いです。
もちろん自分で証拠となるものを集めても問題ありません。
偽造・変造できない形で残すといいです。
最近であれば携帯の写真を利用される方が多いです。
相手に土下座させたい。可能?
法律では婚約破棄の問題については債務不履行または不法行為として、金銭のみで解決します。
法律を離れて相手が素直に応じるのであれば別に土下座してもらっても構わないのですが、法律で強制することはできません。
相手に無理やりさせると強要罪になりかねませんのでご注意ください。
どうやって請求する?
請求する方法としては
- 口頭
- メール
- 電話
- 手紙
- 内容証明
- 裁判
など様々あります。
請求したことが書面できちんと残るという意味で内容証明を利用される方が多いです。
婚約破棄の慰謝料請求段階の基礎知識(内容証明を中心に)
別居前であれば話し合う
身近にいるのであればよく話し合うことがまずは一番です。
別居後に話し合いができないようであれば内容証明の送付を考えましょう。
誰に頼める?
慰謝料問題について頼める専門家としては、
- 行政書士
- 特定司法書士
- 弁護士
がいます。
行政書士・司法書士・弁護士の違いは?
行政書士
平均的に報酬が低い
相談業務ができ、内容証明・示談書作成ができる。
交渉はできない。
特定司法書士
平均的に報酬は弁護士に近い
相談業務ができ、内容証明・示談書作成ができる。
交渉はできるが一定の上限額(140万円)がある。
弁護士
平均的に三者の中では報酬が一番高い
相談業務ができ、内容証明・示談書作成ができる。
交渉ができる。
内容証明を出すために必要なことは?
相手の住所・氏名を最低限把握しておかなければなりません。
住所がわからないどうしたらいい?
会社の住所が分かる場合は会社に送ることも可能です。
何も分からない場合は内容証明は無理ですので、直接手紙を手渡しすることになると思います。
内容証明発送前に相手に知らせておかないと駄目?
その必要はありません。
内容証明は専門家が作成しないと駄目?
ご自身で作成して発送しても問題ありません。
専門家は慣れている点がメリットです。
費用が余分にかかる点がデメリットです。
そもそも内容証明にしないと駄目?
内容証明は少し大げさな感じですので相手に心理的圧迫が加わります。
それほどない場合は簡易書留や通常の普通郵便を考えることも必要です。
専門家に依頼するにしても、専門家の名前を入れるか専門家の職印を押してもらうかなどについても個別に検討したほうがいいでしょう。
内容証明を送れば慰謝料が支払われる?
内容証明は単なる請求の意思表示なので、相手が支払うかどうかは別問題です。
宣戦布告したという意味合いです。
内容証明を送る相手は?
原則は婚約者です。
婚約者の親に請求できない?
請求の内容によります。
慰謝料請求はできません。
あまり強く請求すると恐喝になりかねません。
しかし、婚約者が話し合いに応じない時に、話し合いに応じるように言ってもらえないかというように親に請求してもいい内容であれば請求できます。
内容証明はどう書く?
一方的に喧嘩を売るような書き方をしてしまえば、相手は拒否してくるのが当然です。
こうなってしてしまっては何も進まず意味がありません。
自分の権利主張をきちんとすることも重要ですが、相手の反省を促すか、少なくとも相手に交渉のテーブルにつかせるような書き方をすることが必要です。最低限返信を出そうと思わせるように仕向けておくことが重要です。
怒りが収まらないかもしれませんが、自分の言いたいことだけを書いておくというのはあまり得策ではありません。
相手が支払いに応じない場合は?
支払いの有無又は金額について交渉を開始することになります。
- 金額を調整する
- 一括払いを分割払いにする
様々な点で譲歩しながら交渉されるといいでしょう。
なお、この交渉ができるのは本人と弁護士のみです。
慰謝料を請求されたらどうする?
採るべき方法としては次の3通りです。
- 否定する
- 謝って交渉する
- 素直に支払う
否定
否定しても結婚する意思があるのかないのかで少し変わります。
結婚する意思があるのであれば、今後のこともありますので、否定して問題が解決するわけではなく結局のところ話し合いが必要ということになるでしょう。
結婚する意思がないのであれば、これは完全に喧嘩別れとなってしまい相手が訴訟に持ち込む可能性が上がります。
時間的負担や精神的負担を考えた上でそういった態度をとるか決められるといいと思います。
謝って交渉
謝り方にも素直に婚約破棄の責任を認めてしまう方法と、何を謝っているのかよくわからない文章で煙に巻く方法があります。
前者の方が心証がいいのは勿論ですが、認めてしまうことは不利な証拠となってしまいますのでご注意ください。
経済的に余裕がないのであれば、前者のような対応の仕方でもいいと思います。
支払う
婚約破棄の慰謝料問題については金銭で解決するのは法律の定めですので、相手の要求する金額をそのまま支払うのであれば問題終了です。
しかしそれは法律上の問題であって事実上は少し違うのでご注意ください。
素直に支払ってしまうと相手方が調子に乗って増額してきたり、難癖をつけてくる場面もみられるからです。
必ず示談書を作成するようにしてください。
示談書を作成する時間がないようなときは、
相手にこれ以上請求することがないという一筆を書かせて、支払ったことがわかるように振り込みか領収書もらうようにしてください。
婚約破棄の慰謝料解決段階の基礎知識(示談書を中心に)
示談書はいつ作成する?
基本的には話し合いがまとまった後ですが、実際はいつでもいいです。
お互いの話し合いがまとまる前から作成しておいて、たたき台にしながら交渉をすすめる方がうまくいく場合が多いようです。
示談書はどちらが作成する?
どちらでも構いません。
請求するがが作成する場合は、最初から作成すると良いでしょう。
請求されたほうが示談書を見て解決の基準が明確にわかるからです。
請求されたほうが作成する場合は、支払いの前に必ず作成して署名するようにしてください。
紛争の蒸し返しを防ぐためです。
示談書じゃなく誓約書では駄目?
題名の違いなのでどちらでもかまいません。
当事者双方の約束事を記載するという意味では示談書の方がいいかとは思います。
示談書は専門家が作成しないと駄目?
内容証明と同様でご自身で作成しても問題ありません。
専門家は慣れている点がメリットです。
費用が余分にかかる点がデメリットです。
慰謝料全額ををもらったら示談書は不要?
お金が支払われたら終了というのであればいいですが、通常は
- 謝罪
- 今後会わないことの誓約
- 違反した場合の違約金
など様々な点を約束することが多いです。
その約束が必要な場合は示談書を作成することをおすすめします。
示談書の捺印は?
三文判で構いません。
示談書に違反したら?
示談書は和解契約です。
これに違反することは債務不履行になります。
債務不履行を理由に損害賠償ができます。
公正証書って必要?
公正証書にすると債務名義となる点がメリットになります。
簡単に言うと裁判を一段階省略できるのがメリットです。
ただ、これは金銭支払いなど明確なものに限ります。
示談書の内容全てについて公正証書としての効果が発生するわけでもない点、
作成に手間と費用がかかる点がデメリットと言えます。
慰謝料の支払いが分割払いの場合に始めて作成を検討すれば足りるかと思います。
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